FEATURE 特集
ナパ・ヴァレーに魅せられて、私の人生は大きく変えられてしまった、といっても過言ではありません。
この地に足を運んでいなかったら、幻のワインといわれる「ポートフォリオ」の造り手であるジャンセンズ夫妻と出逢っていなかったら、きっと違う人生だっただろう、と思うのです。
二人の偉大なアーティストとの出会い
2006年春、当時、私がマネージャーを務めていたギャラリーバー「未来画廊」で、ナパ在住のアーティスト、リュック・ジャンセンズの個展を開催したのが、すべての始まりでした。彼の「フォトグラヴィア」という手法を使った幻想的な作品の数々は多くの人を魅了し、個展は大成功。そして、そのとき、彼に手土産として渡されたのが、長年「オーパス・ワン」のディレクターを務めていたという妻、ジェヌヴィエーヴが造るプライベートワイン「ポートフォリオ」でした。
初めて口にした時の衝撃は、今でも忘れられません。タンニン豊かな力強いワインの中に秘めたナチュラルでエレガントな味わい!震えるほど感動しました。このワインの造り手に会いたい!このワインができる地を自分の目で見てみたい!気がつけば、数ヶ月後には、ナパ・ヴァレーに飛んでいました。突き動かされるような衝動、いま思えば、運命的にこの地に呼ばれていたような気さえします。少し時間は掛かりましたが、ジャンセンズ夫妻からポートフォリオワインの日本独占販売権を引き受け、自分で会社を立ち上げ、このワインの素晴らしさを広めるための仕事に人生を捧げているのですから。
知られざるナパ・ヴァレーの魅力
ナパ・ヴァレーの魅力は、素晴らしいワインの産地であることは言うまでもありません。
この地の生産者たちは、伝統や規制にとらわれることなく、自由な発想でワイン造りを行っています。多様なブドウ品種を栽培し、自らの感性を大切に醸造を行い、類まれな魅力溢れるワインを生み出しています。
それまで、私が抱いていたナパ・ヴァレーのイメージは、のどかに広がるブドウ畑を眺めながら、おいしいワインが飲める田舎町、というものでした。しかし、実際には、そこは単なる“のんびりした田舎町”などではなく、豊かな食文化に恵まれ、町にアートが溶け込み、知性と感性を持ち合わせた大人たちが集う理想のリゾート地だったのです。特に、食文化のレベルの高さには驚かされます。ここがアメリカであることを忘れてしまうほどです。ワイン造りを通じて伝わったヨーロッパ文化と、自由でオープンなアメリカ文化がうまく溶け合い、他にはない独特な世界観が繰り広げられています。
私にとって、ナパ・ヴァレーは、のどかな風景が心を癒してくれる場所です。日々を見つめ直せる場所です。感性を揺さぶられる場所です。人生をよりよく生きる、楽しく生きる秘訣を教えてくれる場所です。
この地を訪れるたびに、この地の新しい魅力に引き込まれていきます。
利便性を追求した挙句、時間に追われるように生活する私たちに、改めて人の幸せとは何か? を問いかけてくる町のように思えます。
My Favorite Restaurants
The French Lundry
「全米一予約の取れないレストラン」と言われているトーマス・ケラー氏のお店。全米で数少ない3ツ星レストランの1つ。
木造一軒家を改装した素朴な佇まい。かつては洗濯屋(ランドリー)だったそう。
Auberge du Soleil
ラザフォードにあるオーベルジュ・デュ・ソレイユ。
お天気のよい日にちょっと遅めのテラスランチがおすすめ。
ロブスターサラダにソーヴィニヨン・ブランを合わせて。
※上の大自然の写真はここから見える広大な景色
Terra
西海岸でスターシェフとして有名な曽根廣喜氏のお店。
地元の素材を大切にした、繊細なお料理はさすが日本人シェフ。
和のエッセンスがきいた西洋料理には新しい発見がいっぱい。
Redd
アジア、メキシコ、ヨーロッパ感を取り入れたWine Country Cuisine(ワインに合う、素材を生かしたシンプルな料理)。料理も空間もサービスも絶妙なバランスが心地よい。